「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」 扇情的なタイトルに反して内容は、いたって真面目
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」
なんというタイトルでしょう。
現在、訪問介護員(介護ヘルパー)として働いている私にとっては、興味を持たずにはいられないタイトルでした。
いったいどんなとんでもない内容が描かれているのか!?
とても気になり読んでみたところ、思いのほか、まじめな内容だったのでした。
現在の介護の現場での問題点などにもフォーカスされているので、
- 介護職の人
- 家族に要介護者がいる人
- 要介護者本人
- これから介護の心配がある人
すべての方のお役にたてそうな本でした!
これから内容の紹介と、私なりの感想を書きましたので、よかったらご覧ください(^^)
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」本の紹介
著者:藤原るか
出版社:幻冬舎
発売日: 2019/7/31
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」あらすじ
介護職は重労働のうえ低賃金であるため、人手不足が続いている。それなのに2018年の調査では、なんと4割の介護ヘルパーがセクハラを受けたと回答。介護歴28年、百戦錬磨の著者自身も、利用者から幾度となくベッドに誘われたり、パンツを下げ性器を見せられ迫られたり、キスをされそうになったりしたが、見事にかわし仕事をこなし続けてきた。そして「#Me Too」運動以降、セクハラをなくそうという流れは一気に加速。セクハラ・パワハラをなくし、介護職をよりやりがいのある仕事にするためのヘルパー奮闘記。
内容(「BOOK」データベースより)
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」目次
目次を見るだけで、本の内容に興味がわいてきました。
気になるページだけでも読んでみるといいかもしれません。
【目次】
第一章 介護現場は最も危険なセクハラ横行地帯だった!
2012年に起きた川崎市の強制わいせつ事件
初任者研修で聞いた「全裸で立ちはだかる青年」
ヘルパーをベッドに誘う老人
追いかけられ、テーブルの周りをグルグル回った笑えない話
パンツを下げ、性器を見せて迫ってくる老人
意外と多い「性器を洗って」と要求する老人
鏡でヘルパーの動きを観察する50代の障害者
セクハラが当たり前の「エロじじい」もいる
元自衛官の急所を蹴って脱出したことも
キスを迫られ、必死に抵抗
トイレ介助で性器を顔に押しつけられる
ヘルパーをデリヘル扱いする老人
自慰行為を見せて喜ぶ老人
「姉ちゃん、裸じゃないのか?」とつぶやいたヤクザのドン
「あんた、旦那とできてるんでしょう!」と言い放った老夫人
「イケメンを連れてきて」という老夫人
ヘルパーに「もう来なくていい」といった妻の嫉妬心
利用者の息子にまつわるセクハラめいた話
障害のある思春期の息子を持つ母親の悩み
ヘルパーに性の悩みを相談した障害のある男性
第二章 在宅介護でよくあるパワハラ
セクハラよりも圧倒的に多いパワハラ被害
ヘルパー泣かせだった元美容部員の女性
プライドが高いがゆえにパワハラをする建築家
几帳面すぎる家族からのパワハラ
「中腰で作業しろ」と命令する元ヘルパー
調理した料理をひっくり返す男性
ヘルパーを拒絶して杖を振り回す元大学教授
母親を自分で介護したい娘からのパワハラ
親の介護を放棄する子ども
利用者の生い立ちがわかると、気持ちが楽になることも
自宅に入らせてくれない認知症のドクター
見栄を張って無理難題をいう元社長
第三章 在宅で直面するてんやわんやの出来事
目の前の食べ物を認識できない認知症のお年寄り
自宅に入れてくれない元英語教師
双子の姉妹の自宅で英語のレッスン
訪問の途中で出会った迷子のお年寄り
近づく台風のなか、娘のために買い物に出かけた90代の母親
娘とケンカして錯乱してしまった80代の母親
背広を着て出かけ、地下鉄で保護された男性
12畳のリビングが水浸し!?
お正月料理や大掃除はNG?
命に関わる寒い時期のヒートショック
ゴミ屋敷になるのには理由がある
ヘルパーを困らせる議論好きな利用者
ヘルパーが直面する自宅での孤独死
第四章 ペット全盛時代の訪問介護はむずかしい
ペットの扱いに困るヘルパーが急増中
毛玉だらけの犬の正体はシェルティだった!
室内飼いには不釣り合いな犬に戦々恐々
とんでもないところに保管してあった動物の亡骸
ひょんなことから犬を保護することに
自宅に取り残された3匹の猫たち
モジャモジャの毛の塊の正体とは?
部屋のなかから猫が10匹以上!!
シニア世代がペットを飼うためには
第五章 介護をめぐる殺人事件
50代の男性に殺害された70代の女性ヘルパー
80代の女性から首を絞められた20代の女性職員
介護する父親を殺してしまった50代の息子
90代の夫婦が浴槽内で倒れて死亡
第六章 ハラスメント実態調査からわかること
介護従事者の74%がハラスメント被害に
セクハラを受けた人は大きなストレスを感じている
誰かに相談しても変わらないという現実
介護現場では当たり前のように起こるパワハラ
相談しても変わらないのはパワハラもセクハラも同じ
介護従事者の社会的地位の向上が解決の糸口?
社会の動きに連動して変わっていく介護業界
第七章 超高齢社会にヘルパーは欠かせない!
ヘルパーは家政婦とは違う
生活援助の「回数制限」と身体介護の「見守り的援助」の追加
これからは「混合介護」が増えていく?
「病院への付き添いは玄関まで」という理不尽なしくみ
ヘルパーのなり手はいるのに、人材不足なワケ
人手不足をボランティアでまかなう?
介護分野での外国人雇用は成功するのか
現金給付のあるドイツの介護保険制度
韓国にもある介護家族を支援する制度
ソウル市から始まったセクハラ、パワハラ制度
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」本の感想
要介護者(介護される側の高齢者)からのセクハラや、性的な嫌がらせ。
認知症になると、性的な関心や欲望への抑制が効かなくなったりして、おしりや胸をさわろうとしたり、背後から抱きつこうとすることがある。
ということは、知識としては知っていましたが、ヘルパー歴2年目の私はまだそのような目にあったことはありません。
それが、具体的にどのようなものなのか、どんな風に行われる(襲われる)のかを知ることができたことで
「自衛する心構え」
のような気持ちを持つことができました。
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」の冒頭はこんな風にはじまります。
「相手に後姿を見せてはいけない。ドアは開けたままにすること」
仕事上のメールの連絡網に、こんな文面の注意事項が書かれていることがあります。
これは利用者にセクハラ行為のおそれがあることを意味しています。
実際、調理や掃除をしているときに、後ろから抱きつかれることがあるのです。
そういう場合にそなえて、できるだけ利用者に背中を見せないようにする必要があります。
また、いつでも逃げられるように、ドアに靴をはさんで開けておくという対応をすることもあります。
私たちヘルパーは個人宅にひとりで出向くという働き方をしており、ヘルパーにとっても、訪問される利用者にとっても、それぞれ違った意味で緊張や抵抗感などがつきまとうことになります。
そこではなにがあっても、ヘルパーは自分ひとりで解決しなければならないし、次回の訪問につなげる必要があるのです。
参照3~4P
私は2年前から現在にいたるまで、実際に介護の現場に身を置いているのですが、こんなにもリスクの高い仕事だとは、考えてみたこともありませんでした。
リスクについて考えていたのは全然違う側面からの内容でした。
支える手がすべったり、認知症で自分では薬の管理ができない方に、薬を飲んでもらうことを忘れてしまったりなど、自分の側に不手際があった場合に、相手(利用者)さんに怪我をさせたり健康を損ねるようなことがあってはならないと、そのことばかりを考えていたのです。
しかし、この本を読んで、考えが変わりました。
自分が被害を被る可能性もあるのです
そのことについて、危険に思うことがこれまではありませんでしたが、この仕事を続けていく上で、絶対に必要な知識を経験談という形で伝えてもらえて本当によかったと思いました。
介護の現場でセクハラに合ったことがないという私は、もしかしたらめぐまれているのかもしれません。
現在所属している介護事業所では、利用者さんの中に、セクハラをするような方はいませんし、もし何かあれば(セクハラに限らず)手の空いているスタッフがすぐにかけつけられる体制をとってくださっています。
自分ひとりで抱え込まなくてもいい。
現場ではひとりだけど、共有(共感)できる社内の仕組みがある。
これは、訪問介護の現場で働く上で、とても大きなことだと感じています。
アマゾンのレビューでも、現役の介護職の方の声が多く載っています。
同じような思いをされている場合も確かにあるようです。
ひどい話です。このままでいい理由はない。
「#Me Too」運動は、いろんな形で発信していかなければなりません。
「介護ヘルパーはデリヘルじゃない」
セクハラに関してだけではなく、介護にまつわるさまざまなことを知ることができる、とてもよい本でした。
- 介護職の人
- 家族に要介護者がいる人
- 要介護者本人
- これから介護の心配がある人
すべての方のお役にたてそうな本でしたので、ぜひどうぞ!
介護関連でよく読まれている記事