万引き家族を観て「家族ってなんだ?」
※画像は映画のチラシからお借りしました
パルムドール受賞の「万引き家族」はもう見ましたか?
子どもを持つ母がこの映画を見ての感想や、映画のことをまとめてみましたのでご覧ください。
ほんとうは感想を誰かと語り合いたいのですが忙しい子育て中ということもあり、まわりに共有できる相手がいないんです…。
なので、 もしよかったらコメントであなたの感想をいただけるとうれしいです!
2019年7月追記
「万引き家族」アマゾンプライムで無料配信はじまりました!
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「万引き家族」英題と仏題は?
第71回カンヌ国際映画祭、最高賞パルムドールに是枝裕和監督「万引き家族」
ちなみに現地フランスでは
「MANBiKI KAZOKU」 とそのままのタイトルで
アメリカでのタイトルは
「Shoplifthing」英語で万引きという意味だそうです。
万引き家族のあらすじ
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人とこの家の持ち主である初枝(樹木希林)が住んでいる。
彼らの目当ては初枝の年金だ。
そして足りない生活費は万引きで補てんしていた。
社会の底辺を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えない。
互いに口は悪いが仲よく暮らしていた冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子ゆり(佐々木みゆ)を、見かねた治が家に連れ帰る。
体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにした。
だが、ある事件をきっかけに秘密はバレてしまい家族は引き裂かれ崩壊してしまう。
そして、それぞれが抱える秘密と思いが次々と明らかになっていく。
是枝裕和監督「血縁が無い家族は作れるのか?」
この映画を作るきっかけになった
「既に死亡している親の年金を家族が不正受給していた」
という事件があったそうです。
そのときに
「犯罪でしかつながれなかった」
というキャッチコピーが思い浮かんだそうです。
そして、血縁が無い中で人って家族が作れるのだろうか?
と血縁のない家族の形について思いついたそう。
これはきっと、家族とは何かと考える話でもあり、父親になろうとする男の話でもあり、少年の成長物語でもあるということなのだ。
是枝監督が着想を得た「足立区111歳年金詐欺事件」
監督が着想を得たとお話されていたのがこちらの事件
東京都足立区の民家で戸籍上「111歳」の加藤宗現さんの遺体が見つかった事件で、警視庁捜査2課は27日、加藤さんが生存しているように装い公立学校共済組合(東京・千代田)から遺族共済年金約915万円を不正に受給したとして、いずれも無職で加藤さんの長女の真子(みちこ)容疑者(81)と孫の登貴美容疑者(53)を詐欺容疑で逮捕した。
一連の高齢者所在不明問題のきっかけとなった事件は、逮捕者が出る事態となった。同課は2人が年金を生活費や自宅の修繕費、証券取引などに使ったとみて、不正受給に至る詳しい経緯を調べている。
同課によると、真子容疑者は「すでに死亡した父が生きているように装って年金を受け取った」、登貴美容疑者は「母と相談し、年金をだまし取った」と供述しており、いずれも容疑を認めているという。
足立の「111歳」事件、長女・孫を逮捕 年金不正受給の疑い :日本経済新聞
私が思い出したのは「豊中市釣り具店窃盗事件」
私が「万引き家族」というタイトルだけを聞いて真っ先に思いだしたのはこちらの事件の方でした。
小学生を含む子供3人に万引きをさせたとして、30代の両親が逮捕されていたことが分かりました。窃盗容疑で逮捕されたのは、大阪府豊中市に住む防水工の父親(36)と無職の母親(33)の2人。発表によると2人は2014年10月25日、大阪府吹田市内にある釣具店で、中学生の長男(14)・小学生の次男(12)・小学生の長女(9)に釣具セットを1点ずつ渡し、万引きさせた疑いが持たれています。
これについて両親は「子供たちが勝手にやったことだ」などと容疑を否認していますが、大阪府警が釣具店内の防犯カメラの映像解析、および親子間でやり取りしていたメールの内容を調べたところ、両親が関与していたことが裏付けられました。
両親は同様の犯行を繰り返していたとみられ、万引きが店側に発覚するたび、「うちの子供が迷惑をかけてしまってすみません」などと謝罪するとともに、店員の目の前で子供を叱りつけるなどして、警察への通報を免れていた模様。
子供に万引きさせる窃盗事件-防水工の父親は生活保護費を不正受給 | ニュース速報Japan
と、おもっていたらやはりインタビューでこんな風におっしゃっていました。
「あるとき、子供に万引きさせた親が捕まったニュースを見たんだけど、そこは親子で釣りが好きで、釣り竿だけ換金せずにいたら足がついたんだって。やってることはもちろん悪いけれど、いい話だなと思った(笑)。今は、犯罪がニュースになったら、断罪されて終わり。人の不幸というのが、社会のせいじゃなく、自己責任で切り捨てられて、誰もその先のことを想像しなくなっている。でも、そうせざるを得ない状況があったんじゃないかと僕は思うんです」
是枝監督が『万引き家族』の安藤サクラ起用に「賭けでした」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
万引き家族の感想
冒頭、親子の万引きシーンからはじまる。
店員の目から子どもの姿をさえぎる華麗なチームプレイ。さすが親子と思わせる息の合った仕事ぶりだ。
親子は仕事(万引き)帰りに外に締め出されて震えている幼女を見つけて家に連れ帰ってしまう。
万引きをするほど余裕が無いにも関わらず。普通ならあとの面倒を考えて、きっと出来ない。なぜできるのか?
帰った家は明らかに貧しく祖母、妻、妻の妹、そしてさきほどの父と息子の5人が暮らしている。
男の妻は、この家の持ち主の祖母の孫にあたる。
その家の家族と拾われた幼女は、ともに夕食にカップラーメンをすすり、コロッケを分け合う。
皆が座れる食卓などは無い。床で。キッチンの物だらけのテーブルで。それぞれの場所で別々の物を食べている。
しつけなどはここにはない。食べて生きる。それだけがあるのだ。
そして食べるために働く。働く内容は現場作業の時もあれば万引きの時もある。それだけだ。
そして、幼女は家には戻らずこの家にいることになった。
いくら被虐待児かもしれないといっても普通なら出来ない。
普通じゃなかったからこそ救われることもあるってことなのか…。
このように悲惨ともいえる家庭環境なのに、子供たちは明るい。見ているこちらも、胸がつまるような気持ちにはならない。
まーまーいーじゃん。なんとかなるっしょー?で事が進んでいく。とにかく状況に反して深刻さがないのだ。
妹の亜紀は自身の風〇店(ライトなやつ)のアルバイト先での出来事を笑いを交えて祖母に話す。
息子は小学生であろう年齢なのに学校へ行かず、ずっと家にいる。
でも、そのことに誰も何も言わない。
どうやらここではそれが当たり前のようだ。なぜだ?
少しづつ、おや?と思わせる場面が出てくるのだがまだわからない。
このシンプルで原始的な生活になったのには理由があった。そう。この家族には、誰にも言えない秘密があったのだ…。
現代の日本では、このような(万引きは別として)貧困家庭は少数派で
「ほんとにこんな風に暮らしてる人いるの!?」
と感じる人が多いかもしれない。
でも、確かにあるのだ。
事件にならないと表に出てこないのだ。
それにしてもどうしてこういう家庭は物が多くてごちゃごちゃしているんだろう。
金に余裕がないのは、心の余裕もなくなる。
そんな人間は掃除や片付けは二の次になるのだろうか。
きっと日々をやり過ごすだけでいっぱいいっぱいなのだろう。
そんなごちゃごちゃした家で、いっぱいいっぱいの人達が暮らす変な日常がずっと続くのかと思われたのだが…
注意!ここからネタばれありです!
この先は、映画を観た方と共有したくて書きました。まだの方は見ないでください!!
これは母性の話だと思った。祖母の初枝(樹木希林)と孫の信代(安藤サクラ)の二人の母性が、弱い男と弱い立場の子ども達を引き寄せたのだ。
ひどい暮らしぶりとはいえ、仲良く楽しく過ごしている家族。
しかし、その姿はほんとうの家族ではなかったということが徐々にあきらかになってくる…。
窃盗犯の父と万引きのパートナーでもある息子祥太は本当の親子ではない。
父、治が数年前にパチンコ店での車上荒らしの最中に車中に居た子どもを救ったのだ。
そう。拾ったのは女の子だけではなかったのだ。
母信代と年の離れた姉妹だという亜紀もまた姉妹ではない。
祖母初枝の分かれた夫の後妻の家族なのだ。
どんな事情か描かれてはいなかったが、家出してきたのだ。
ものすごい吸引力で次々と傷ついた人間が集まってくる。妖怪じみたおばあさんと、生活に疲れたおばさんのところに。
象徴的なシーンが家族全員で海に遊びに行った場面だ。
おばあさんは浜辺でひとり座って波とたわむれる皆の姿をじっと見守っている。
そして次の朝、皆が目覚めるとおばあさんは亡くなっていた。静と動、生と死の対比が印象的だった。
慌てふためく皆に「順番だからね」と冷静なおばさん。
そして皆のそばに居られるように家の敷地内に埋めてやることを提案する。
実はこのとき人を埋めるのは初めての事では無かった。
治と信代は前の夫を埋めた過去があるのだ。金や情以外に、秘密で繋がっていたふたりなのだ。
治のダメ男ぶりに、あきれながらも受け入れる信代が不思議だったのだけど、やっと理由がわかった。
そんな疲れたおばさんが、ある日仕事をくびになった。
おばあさんの年金とおばさんのパートの稼ぎだけが家族を支えているのに。
そしておばさんは、家族を養うべく夜の仕事に就こうとめずらしく化粧をする。
そのときの安藤サクラのスリップ姿の神々しさ!
そしてその姿のまま立てひざでそうめんをすするのだ。
女性の私から見ても魅力的なエロス。
そして愛し合うふたり。物が積み上がった荒れ果てた部屋のなかで。
このシーンが頭に焼き付いて離れない。
人間は不完全な物にほど引き付けられるというが、男にとってこの女のいる場所は最高なる不完全なんじゃないかと感じました。
そしてこの姿を見て、「そこのみにて光輝く」の池脇千鶴のスリップ姿でチャーハンを作る姿を思い出しました。こちらもすごかった!綾野剛、菅田将暉、池脇千鶴という豪華キャストでした。
そして、もうひとり母性を発揮しつつあるように描かれていたのが亜紀だ。
アルバイト先の風〇店で、客の頭を抱きしめて慰める場面と、そのときの話を祖母に甘えながら話す場面。
人は、育ててもらったようにしか育たない。教えてもらったようにしか、人に接することは出来ない。
この子は優しさを祖母からもらっているようだった。
実親のことががあまり描かれていないのでわからないが、求めている「甘える」ということが出来ない親だったのだろうか?
そして治もまた育ててもらったようにしか育たなかった人間だ。
小学校程度の勉強も出来ず、子どもに教えてやれるのは盗みのやり方だけ。
仕事は続かず、すぐにサボりたがる。
しかし優しい。
きっと、そんな人間に育ててもらったのだ。
信代の生い立ちは描かれていないが、母ではなく祖母のところに身を寄せている辺りから、ろくな育てられ方をしなかったのかもしれない。
そして前夫はDV野郎だ。
DV家庭で育った人間は、そういう相手を選ぶことが多いというが、時々見せる子どもに対する優しさは、経験からの共感によるものなのかもしれないと感じた。
拾われた子ども二人も、このまま治と信代に育てられたら同じような人間になったのだろうか。
それは負の連鎖と言えるものなのだろう。
しかし、治に拾われなかったら命がなかったかもしれないのも事実だ。
「かわいそうだよー」
「死んじゃうかもしれないよー」
後のことを考えて躊躇しそうな場面で、感情だけで行動できたのは、それもまたきっと育ちのためなのだ。
終盤、子どもたちの万引きがばれて捕まってしまう。
初枝を埋めた事も全てがばれて子どもたちと離されてしまう信代と治。
そして全ての罪をかぶった信代。
治もまた信代の子どもだったのだろうか?
初枝は土の中で、信代は塀の中に入ることで子どもたちを守ったのだ。
母は子どものためなら何だってできるのだ。
安藤サクラさんが輝いてみえたのは産後だったから!?
リリー・フランキーのダメ男ぶりは、いつも通りのはまり役。
樹木希林は安定の怪演。
松岡茉優も体当たりの風〇シーンがすごかった。
しかし、一番グッと来たのは安藤サクラだった。
安藤サクラはもともと素晴らしい役者だと思っていた。
しかし産後すぐの母性あふれる状態の彼女だったからこそ、これほど心を揺さぶる演技ができたのかもしれない。
汚れ役のはずなのに、最後には聖母のような印象すら与えてしまったのだから。
安藤サクラさん自身もインタビューでこんな風に話している
信代については、撮影に入る前もあとも、素行の悪い女性のイメージがありました。子供に万引きさせているし、家も服も汚いし、何でも菜箸で食べちゃうし(笑)。いつも菜箸を振り回しているので、ずっと汚らしいと思っていました。でも、こうやって取材でいろんな方と話していると信代の印象が変わってくるんですよ。試写をご覧になったみなさんが「汚い女という印象はないです」と言われるので、それが不思議だなと。撮影しながら信代の形が変わっていったので「この人はいい人なのか悪い人なのか」「犯罪している人はみんな悪い人なのか」「何が正義で何が間違いなのか」「家族とは何なのか」など、ずっと問いかけられているような気持ちになりましたねこの家族のしていることは確かに悪いことですが、彼らは必死に生きています。必死こいて笑いながら生きるって気持ちがいいし、いい時間なんだなと、この映画で気付かされました。信代が、家族と過ごす時間のことを「おつりが来るくらい楽しい時間だ」と言うシーンがあるのですが、私もこの映画に関わって過ごした時間は、信代と同じ気持ちです。
『万引き家族』安藤サクラが語る「家族は幸福な修行」 [映画] All About
余談ですが、安藤サクラさんがテレビのインタビューで話していた「授乳中なので現場に子どもを連れてきていた。
カットによって乳の大きさが違うところも見どころのひとつです(笑)」って話。
これ!ほんとにめっちゃわかりましたよ。
子持ちの母あるある!
☆安藤サクラさんのおすすめの作品はこちら
百円の恋
子役のふたり
城桧吏(じょうかいり)くん
子役の城桧吏(じょうかいり)くん2006年9月6日生まれの11才。東京都出身でゲームとダンスが好きなのだそう。
7人組男子小学生ユニット「スタメンKiDS 」所属。
是枝監督はオーディションで桧吏くんを一目見て、「この子を撮りたい」と感じたそう。
映画の中では汚らしい姿をしていたので気がつかなかったけど、めちゃくちゃ美形の男の子です!
佐々木みゆ(ささきみゆ)ちゃん
もうひとりの子役、佐々木みゆちゃんは2011年6月21日生まれの現在6歳。
最近のAmazonのCMにでていますね。小麦アレルギーを持つ女の子の役でした。
「万引き家族」では役柄のため、あまり笑顔を見せない 大人しそうな感じなのですが、CMではお友達のパーティーのような場所で自分も食べられるパンを用意してもらっていたことを知り、はじけるような笑顔をみせてくれました。
是枝監督の映画に欠かせない子役はこんな風に選ぶそうです!私の知り合いの子どもがドラマの子役オーディションに合格したときのお話も書いてます
あー。ほんとによかったので、おすすめします!ぜひ見てください!
もっといろいろ感じたことがあるので、思い出したらまた書き足します!
万引き家族は、現在アマゾンプライム会員なら無料で視聴できます!
1ヶ月無料お試しもあるので、この機会にいかが??
ではでは~
万引き家族、元バックパッカー目線で言うとアジアのスラムにはこんな人たちいっぱいいた。
— やすちん (@yasuchinchi) 2018年6月8日
生きるために盗む。子どもに食べさせるために。そんでしんどい暮らしなのに子どもは笑ってる。眩しい笑顔で。なぜか?
うわ。そうだったんや。「誰も知らない」っぽいね。
— やすちん (@yasuchinchi) 2018年6月17日
『万引き家族』、最初のタイトルは『声を出して呼んで』だった!リリー・フランキーらが語る https://t.co/Fst7tw3Vyj #万引き家族 #リリー・フランキー #安藤サクラ @Movie__Walkerさんから
リリーフランキーさんが「是枝さんの映画であんなにケツを出すとは(笑)。人の家の親の性行為を覗き見たような気持ち悪さが伝われば光栄です(笑)」と万引き家族のインタビューで言ってるけど、これほんと伝わったわ!笑
— やすちん (@yasuchinchi) 2018年6月17日
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